“図書館を中核とした学校づくり”の現場を視察

2018年5月8日

「真の学ぶ力」をつけるために、家庭・地域信頼関係を大切に

平成15年に『全国学校図書館大賞』を受賞した、山形県鶴岡市立朝陽第一小学校を訪ねた。

朝7:45から30分間、にぎやかな歓声とともに、あっという間に蔵書冊数12,000冊の図書室は子ども達でいっぱいになった。それぞれに保護者手作りの図書専用バッグを下げ集まってくる。校長先生によると、625名の児童の内、毎朝200名近くの子どもたちが図書館に通い、貸し借りのため図書力一ドに自分の名前を書いているという。返却本は自分で元の棚に返すセルフサービス。

子どもの年間平均読書冊数は、10年前の平均1人51冊から現在は149.5冊までになった。読書の習慣化がすべての学習の基礎であると校長先生は語る。

朝陽第一小学校の図書館活用教育の柱は、生涯学習社会の入り口に立っている子どもたちに次の2点を身につけてもらうことだと言う。
① 一生の習慣になる「読書」習慣を身につける。
入学式に行う“読み聞かせ”を皮切りに本の楽しさを知らせ、この日から子ども達を意識的に読書漬けにするという。
②「調べ学習(課題解決学習)」スキルを身につけてもらう。
学校図書館という場を、そこにあるさまざまな資料・情報を使いこなす力を授業を通して身につけてもらい、今後身を置く生涯学習社会、高度情報通信社会における「自己学習力」を育成する。「図書館クイズ」などを行うことによって、子どもたちが必要な資料・情報を探し、入手、読み、分析し、まとめ、そのプレゼンテーションを行える力を身につけ、授業などで実践を深める。この両者を身につけてもらう教育を「図書館活用教育」と称している。

鶴岡市にはこういった文化を育んだ歴史がある。朝陽第一小学校の教育のルーツは、荘内藩校「致道館」だと言う。致道館教育の基本的考えは「個性伸長」「自学自習」であり、つまり「一人一人に応じた能力を最大限に伸ばす」というものであった。この思潮を継承し、その教育精神を今につなぐ学校づくりを進めていると。教育方針は、歴史と伝統に支えられた風土が大きく影響しているように思える。

この教育方針を支える体制として、正規の学校司書がおり、朝から夕方まで、子どもたちのいる時間は学校図書館に常駐している。教員の資料面での相談にも十分対応できる。
また、ボランティア(教育サポーター)の存在も大きい。「本のたからばこ」という、読み聞かせ、資料の補修、切り抜きなどを行ってくれる保護者の有志がいる。こういった自主的活動をする保護者のために24時間図書館は開放していると言う。

私が感銘を受けたのは、小学校を卒業する時に、図書館を活用してくれたと言う感謝状に、6年間に読んだ本の全リストも添えて、卒業生個人個人へ手渡すということだ。
作業の大変さは想像に余りある。自分が図書館を支えた一人であり、自分を取り巻く多くの人たちが注目をしてくれているという帰属意識は、きっと次のやる気・学習意欲へのステップへ繋がるのだろう。

文部科学省は8月、小・中学校の総合学習を減らし教科を増やす方針を打ち出し、学習指導要領の改定を進める。真の学力を養う教育とは何だったのか・・・
懐かしい学校図書館の臭いに思い出もよみがえり、ふとそんなことを思った。<いちかわ・かずこ>

>▲写真上は蔵書冊数12,000冊の図書館。 調べたい本が見つかるよう丁寧に分類がされている

>▼下左写真は一年生の読み聞かせ   
下右写真は「おすすめの本」 先生から、先輩から… いつでも誰でもが見られるようファイルで分類されている