震災後10年の神戸を視察!(報告記その2)

2018年5月8日

自分達の手で作り上げていく地域再生プロジェクトの実践

今回視察をした「伊川谷プロジェクト」は、自然に囲まれた「伊川谷」という地域全体を1つの住空間と捉え、医療・福祉・教育などの多機能を持つコミュニティづくりを進めている。活動を援助しているのは、社団法人コミュニティネットワーク協会で、健康と福祉を軸として地域に根ざした多世代・共生の暮らし方、住まい方の実現をめざす「100年コミュニティ構想」に基づいて、プロジェクトを支援している。今回はまだ実体が無く、建設予定地を案内してもらいながら、プロジェクトに取り組む方々から「コミュニティの場作り」「住まい手が主人公のまちづくり」の実践という角度から話を伺った。

伊川谷は歩いて回れる小さな町。地下鉄で三宮や西神ニュータウンと直結し、田畑や里山ののどかさが残り、近郊には温泉もある。また、医療ビルや在宅介護施設が充実し、程よい自然と便利さが共存する町である。隣接する地域は行政主導で開発がすすんだが、伊川谷だけがそのはざまで開発が遅れていた。今回、伊川谷駅を核として行なった都市基盤整理事業内の3ヶ所に高齢者を対象にした「住まい」の拠点を建設・運営していく。まず、伊川谷駅前には高齢者住宅69戸、学生向け住宅8戸が入った、14階・7階・3階建ての三棟を建設予定。中には、レストラン、クリニック、在宅介護サービス事業所、多目的室、静養室兼ゲストルームも備える予定。将来的にはこの他に、駅から少し離れた場所に7階建て高齢者住宅37戸と、戸建10戸の建設も予定しており、高齢者の年齢やニーズに対応し、伊川谷地域内で各棟に住み替えられるようになるという。今までの生活を継続した連続的なケアと看取り、お墓までの仕組みを構築する。

「住まい手が主人公」を理念とする伊川谷プロジェクトでは、建物の設計や施設といったハード面に加え、様々な「暮らしの仕組み」が住まい手参加型で検討されている。看護師やかかりつけ医との連携で安心して最期を迎えられる環境づくり。ボランティアや就業によって生きがいを広げる仕組みづくり。周辺の大学との連携による生涯学習の場づくり。週辺に住む若い世代の子育て支援や文化事業の交流など。「高齢者・若者・子育て世代の100年コミュニティ」が検討中である。すでに伊川谷での暮らしに興味を持つ方々が集まり、建物の設計や入居後の運営、仕組みづくりについての話し合いや勉強会が行われている。

いつまでも自分らしく、安心して住み続けることができるように、様々な暮らしの機能が結ばれて、様々な世代の人たちが安心して暮らせる”結“が神戸・伊川谷で実現されようとしている。高齢者が自立できる支援を、介護保険だけに頼るのではなく、ハウス・地域中で助け合いながら行う。昔は、高齢者が抱える生活の支障は地域で支えあって解決してきた。元気なうちは助け合って生活し、病気になった時に介護や医療、ボランティアの活用を考える。地域の支え合いが希薄といわれる東京では是非考える必要がある自分達の手で作り上げていく地域再生プロジェクトの実践だと実感した。<いちかわ・かずこ>

写真上 伊川谷町の模型 茶色が建設予定の高齢者住宅
写真左 病院が集まっている駅前ビル
写真右 建設予定地を社団法人コミュニティネットワーク協会の方に案内してもらい話を聞いた。